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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Downstream Satcom Pnt

oneNav

L1に依存せずL5帯を直接取得し、GPS妨害・なりすましに強いGNSSチップIPを提供する米企業

oneNav logo

公式サイト: onenav.ai

設立
2019年
米カリフォルニア州サニーベール
従業員
約45名
2024年時点(推定)
累計調達
約5000万ドル
2023年6月時点

基本情報

oneNav(ワンナブ)は2019年に米カリフォルニア州シリコンバレーで設立されたGNSS(全球測位衛星システム)半導体スタートアップである。本社はサニーベール、開発拠点をフィンランド・タンペレにも置く(公式サイト、2026年時点)。共同創業者はCEOのSteve Poizner氏とCTOのPaul McBurney氏。Poizner氏は携帯向けGPS測位技術のSnapTrackを創業し2000年に約10億ドルの株式でQualcommに売却した実績を持つ連続起業家であり、oneNavは4社目のスタートアップにあたる(TechCrunch 2021年5月20日、PR Newswire 2021年5月20日)。

チームはQualcomm、Apple、Intel、SnapTrack、SiRF、Trimble、eRideなどGNSS業界の出身者で構成され、200件超のGNSS特許を保有すると自称する(公式サイト、PR Newswire 2021年)。Seraphim Ecosystem Map 2026上の分類は Downstream > Satcom & PNT > PNT。宇宙専業ではなく、衛星測位信号を利用する半導体・IPベンダーであり、対象は防衛・政府から民生スマートフォン・ウェアラブルまで幅広い。

なお、社名「oneNav」は他業種にも同名企業が存在するが、本レポートの対象はL5帯単一周波数の耐妨害GNSSチップ企業である。

顧客課題と製品

顧客が抱える中核課題は「GPS妨害(ジャミング)となりすまし(スプーフィング)」への脆弱性である。従来のGNSS受信機は主にL1帯(1575.42MHz)を利用するが、L1は妨害されやすく、ウクライナや中東などの紛争地域で軍・民ともに測位が困難になる事例が増えている。

oneNavの解決策は独自の「L5-direct(L5ダイレクト)」技術である。通常の受信機はまずL1を取得してからL5を捕捉する二段構えだが、oneNavはL1を一切使わずL5帯(1176.45MHz、より新しく妨害耐性・精度に優れる信号)を直接取得する。中核となるのが「ASAP(Application Specific Array Processor)」と呼ぶ演算エンジンで、同社は「GNSS向けのGPU」と表現する(Inside GNSS、GPS World)。

主な製品ラインは次の通り(いずれもハードウェアIP/半導体)。

  • pARC(L5-direct Acquisition Receiver Core): 既存GNSSチップに追加してL5直接取得を付与する拡張(オーグメンテーション)IPコア。測位エンジンを丸ごと置き換えずにL5対応できる(公式発表 2023年6月7日)。
  • L5-direct ASIC: 2025年5月に「世界初のL5-direct受信機ASIC」の動作実証を発表。GlobalFoundriesの22nm FDX(22FDX)プロセスで製造。L1妨害への完全な免疫と、L5帯内妨害に対する従来比30倍の耐性、測位精度の約10倍向上、低消費電力を訴求(公式発表 2025年5月28日、GPS World)。

導入効果として同社は、L1回路を排除することでGNSS RF部の面積・電力・コストを約半分に削減できると主張する(PR Newswire 2021年、design-reuse)。顧客が乗り換える理由は、妨害・なりすまし耐性と精度・省電力の同時実現。ためらう理由は、L5単独運用がまだ業界標準ではなく、スマートフォン向け量産採用の実績が公表段階では確認できない点にある。

ビジネスモデル

料金を支払うのは半導体メーカー・デバイスOEM・防衛政府機関である。収益モデルは主に(1)ライセンス可能なIPコア(pARC・L5-direct ASIC IP)の提供、(2)政府向けSBIR等の受託開発。2025年5月時点でL5-direct技術は「ライセンス可能なIP」として提供され、ウェアラブルからUAVまでカスタマイズ可能とされる(公式発表 2025年5月28日)。

IPライセンスは開発設備・在庫を持たない構造(製造はGlobalFoundriesにファウンドリ委託)のため、量産採用が決まればロイヤルティ型の高粗利・継続収益が期待できる。半面、採用決定までのリードタイムは長く、大手OEM設計サイクルに数年を要するのがこの業態の通例である(推測)。具体的な単価・ロイヤルティ率・売上は非公開。

市場と競争力

対象市場はGNSS/測位・タイミング半導体、およびその中でも耐妨害・アシュアードPNT(A-PNT)分野。GPS妨害の常態化を背景に、防衛・アビオニクス・重要インフラのタイミング用途で需要が拡大している。従来の代替手段はL1受信機に外付けの耐妨害アンテナ(CRPA)やソフトウェア対策を組み合わせる方式で、大型・高コストになりがちだった。

競合はu-blox、Qualcomm、Broadcom、STMicroelectronics等の既存GNSSチップベンダーや、耐妨害ではSafran、Septentrio、Hexagon(NovAtel)などが挙げられる。oneNavの差別化は「L1を使わずL5単独で高感度取得する」点にあり、これを広範な特許ポートフォリオ(200件超と自称)で保護している。L1を物理的に持たないため、L1妨害の影響を原理的に受けない構造的優位がある(公式サイト、Inside GNSS)。

参入障壁としては特許、GNSS信号処理の専門人材、政府・防衛の認証・信頼関係(In-Q-Telとの提携)が効く。一方、Qualcomm等の巨大プレイヤーが同等のL5直接取得を実装すれば競争は激化しうる。

実績と成長性

  • 2021年5月: 世界初の「pure L5」モバイルGNSS受信機を発表(PR Newswire)。
  • 2023年6月: pARC製品を発表(公式発表)。
  • 2024年7月: L5-direct技術がイスラエルでの防衛・位置情報サービス向けにGPS妨害・なりすまし対策として採用・検証されたと発表(Business Wire 2024年7月19日、AP配信)。
  • 2025年5月: 世界初のL5-direct ASICの動作実証を発表。2025年初頭に軍機関の評価を通過したと言及(公式発表)。
  • 2025年6月: AFWERXからDirect-to-Phase II SBIR(125万ドル)を獲得、L5-direct技術に充当(公式発表)。

政府・防衛での評価・採用が進みつつある一方、大手スマートフォンでの量産搭載は公表情報では確認できず、商用化は「IPライセンス提供・評価段階」と位置づけるのが妥当。売上・粗利・損益などの財務指標はすべて非公開。従業員数は2021年5月時点で30名超、その後約45名とされ、緩やかな拡大がうかがえる(TechCrunch 2021年、公式サイト)。

資本政策と投資評価

累計調達額は2023年6月時点で約5000万ドル(公式発表)。主なラウンドは以下(いずれも米ドル、基準年は各時点)。

  • シード〜シリーズA: 2021年のシリーズB以前に累計約1200万ドル(推定、Series B後の総額33百万ドルから逆算)。
  • シリーズB: 2021年5月、2100万ドル。リードはGV(Google Ventures)、Norwest Venture Partners、GSR Venturesが参加。累計3300万ドルに(PR Newswire 2021年)。
  • シリーズC: 2023年6月、1700万ドル。リードはMVP Ventures、既存投資家のGV、GSR、Norwest、In-Q-Telが参加。累計5000万ドルに(公式発表 2023年6月7日、New Electronics)。
  • 政府資金: 2025年6月にAFWERX SBIR フェーズII 125万ドル。

In-Q-Tel(米情報機関系VC)が株主かつ提携先である点は、防衛・情報機関への販路として重要。推定バリュエーションは非公開だが、シリーズCで前回比増と公表(公式発表)。今後、量産採用が決まればロイヤルティ収益の立ち上がりが見込める一方、採用が長引けば追加調達が必要になる可能性が高い(推測)。出口はGNSS大手・半導体大手によるM&A(創業者の前歴もその路線)、あるいは防衛PNTのポートフォリオ企業への統合が現実的なシナリオと考えられる(推測)。

総合評価

一言で表すと「L5専用の耐妨害GNSSチップIPのパイオニア」。顧客が選ぶ最大の理由は、L1を物理的に持たないことによる原理的なL1妨害免疫と、精度・省電力・小型化の同時実現である。最も強い競争優位は、L5直接取得を守る広範な特許群と、SnapTrackを10億ドルで売却した経営陣・GNSS専門人材、In-Q-Telを通じた防衛政府への信頼関係。

最大の事業リスクは、(1)大手スマートフォンでの量産採用が公表段階では確認できず、収益化タイミングが不透明なこと、(2)QualcommやBroadcom等がL5直接取得を実装すれば構造優位が縮む可能性。今後3〜5年の成長ドライバーは、GPS妨害の常態化に伴う防衛・重要インフラ向けA-PNT需要と、L5-direct ASIC/IPのライセンス採用拡大。競合と比較した相対的位置は、耐妨害GNSSの中でも「L5単独」という尖ったニッチのリーダーだが、規模では既存大手に大きく劣る。財務が全面非公開のため、売上規模・粗利・採用済み顧客数は判断できない。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立2019年、米カリフォルニア州サニーベール(タンペレに開発拠点)公式サイト/Tracxn 2026
創業者Steve Poizner(CEO、元SnapTrack)、Paul McBurney(CTO)PR Newswire 2021
従業員約45名(2021年時点で30名超)公式サイト/TechCrunch 2021
分類Downstream · Satcom & PNT · PNT(耐妨害GNSS半導体IP)Seraphim 2026
主力製品L5-direct技術、pARC IPコア、L5-direct ASIC(22FDX)公式発表 2023-2025
差別化L1不使用のL5単独取得でL1妨害に完全免疫、L5帯内妨害30倍耐性、精度約10倍公式発表 2025年5月
ビジネスモデルIPライセンス+政府受託(SBIR)、ファウンドリ委託の高粗利型公式発表 2025
累計調達約5000万ドル(2023年6月時点)公式発表 2023年6月
直近ラウンドシリーズC 1700万ドル(2023年6月、リードMVP Ventures)公式発表 2023年6月
主要投資家GV、Norwest、GSR、MVP Ventures、In-Q-TelPR Newswire 2021/公式 2023
政府実績AFWERX SBIR フェーズII 125万ドル、イスラエルで防衛採用・検証公式発表 2024-2025
財務売上・損益とも非公開

情報源