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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Access Build

Ursa Major

宇宙・極超音速向けロケット推進を専業とする米国の独立系メーカー

Ursa Major logo

公式サイト: ursamajor.com

設立
2015年
米コロラド州ベルソウド
従業員
約270名超
2023年時点、以後拡大
累計調達
約6億ドル
2025年11月時点

基本情報

Ursa Major Technologies は2015年に SpaceX と Blue Origin の推進エンジニア出身の Joe Laurienti が創業した、ロケット推進専業の独立系メーカーである(出典: Wikipedia, 2026年時点)。本社は米コロラド州ベルソウド。宇宙分野ではロケットエンジン、防衛分野では極超音速ミサイルと固体ロケットモーター(SRM)を手掛け、推進系を主力とする点で Seraphim Ecosystem Map 2026 の Space Access より Build より Propulsion に分類される。

創業者の Laurienti に代わり、2024年8月5日付で元 Maxar Technologies CEO の Dan Jablonsky が CEO に就任した(出典: Ursa Major プレスリリース, 2024年)。経営陣強化のため、元 Northrop Grumman CEO の Ronald Sugar、Alsop Louie Partners の Gilman Louie を取締役に迎えている(出典: Ursa Major, 2025年11月)。従業員は2023年4月時点で約270名で、以後の受注拡大に伴い増員が進むとみられる(推測)。

同社は宇宙専業ではなく、防衛(極超音速・戦術ミサイル・SRM)へ事業重心を大きく傾けている点が特徴である。この防衛シフトは2023年以降に加速した。

顧客課題と製品

主な顧客は米国防総省(DoD)、米空軍研究所(AFRL)、海軍、および Stratolaunch、BAE Systems などの防衛・宇宙企業である(出典: Ursa Major, 2025年11月)。過去には Astra(Rocket 4 上段)、Phantom Space、Generation Orbit なども顧客とした。

顧客が抱える課題は主に二つ。第一に、ロケット開発企業が推進系を自社開発すると莫大な時間とコストがかかるため、外部から実績あるエンジンを調達したいという需要。第二に、米国の SRM 供給が Northrop Grumman と Aerojet Rocketdyne(2023年に L3Harris が買収)の実質2社に限られ、ミサイル増産のボトルネックになっているという安全保障上の課題である(出典: Breaking Defense / DefenseScoop, 2023年)。

主力製品はハードウェアであるロケットエンジン群。液体エンジンは Hadley(推力5,000ポンド、液体酸素/ケロシン、初期量産)、Ripley(50,000ポンド、開発中)、Arroway(200,000ポンド、液体酸素/メタン、開発中)。加えて Draper(4,000ポンド、過酸化水素/ケロシンの貯蔵性燃料、閉サイクル触媒式)は極超音速・応答的宇宙・軌道上機動向けの新カテゴリーを狙う(出典: FlightGlobal / Aviation Week, 2025-2026年)。SRM 分野では、3Dプリンティングを核とする Lynx 技術でケース・ノズル・点火器を積層造形し、既存サプライチェーン制約を回避する(出典: Ursa Major / 3D Printing Industry)。

導入効果として、Lynx は直径2.5インチまでの小型エンジンケースを約50個を3日で造形でき、従来工法の約1カ月から大幅に短縮するとされる(出典: 3D Printing Industry)。Draper は極低温燃料と異なりミサイル内に長期充填したまま貯蔵でき、固体燃料の即応性と液体燃料のスロットル・再着火性を両立する点が乗り換え理由となる。導入をためらう理由は、Ripley・Arroway など大型液体エンジンがまだ開発段階で飛行実績が限られる点にある。

ビジネスモデル

料金を支払うのは主に政府・防衛機関と民間ロケット/ミサイル企業。収益モデルは受託開発契約とエンジン・モーターの製造販売が中心で、政府開発契約(コストプラス/固定価格)と量産納入が組み合わさる。単価はエンジン1基あたり数十万〜数百万ドル規模(推測)で、契約単位では数千万ドル規模の受注が実際に確認できる。例えば AFRL からの2,860万ドル契約(2025年5月)、Draper 関連の3,490万ドル契約(2025年9月)がある(出典: PRNewswire / FlightGlobal, 2025年)。

継続収益は、量産フェーズに入れば同一プラットフォームへのエンジン反復供給とアフターサービスで見込める。ハードウェア製造業ゆえ工場設備・材料・熟練人員といった固定費が重く、粗利率は初期は低くなりやすいが、Lynx の積層造形は工程集約により量産時の利益率改善余地がある(推測)。顧客獲得から売上計上までは、開発契約から飛行実証・量産まで数年単位を要する。2025年第3四半期までの累計受注(bookings)は1億1,500万ドル超と公表されており、受注から収益化への転換局面にある(出典: Ursa Major, 2025年11月)。

市場と競争力

対象市場は、(1)商用・防衛用ロケットエンジン、(2)極超音速ミサイル推進、(3)固体ロケットモーターの三つ。特に SRM 市場は米国のミサイル増産需要を背景に構造的な供給不足にあり、政府が新規参入を積極的に後押ししている点が「今この市場が立ち上がる」必然性である。

競合は、SRM では長年の2大寡占である Northrop Grumman と Aerojet Rocketdyne(L3Harris)に加え、新興の X-Bow Systems と Anduril。液体エンジンでは Rocket Lab や Firefly など内製エンジンを持つ企業や、推進を内製する打ち上げ企業全般が代替手段となる。Ursa Major の差別化は、特定の打ち上げ機に紐づかない中立的な推進専業サプライヤーである点、Lynx による積層造形での短納期・供給網分散、そして Draper の貯蔵性液体という独自ニッチにある。

参入障壁は、ロケット推進の技術的難易度、政府認証・防衛調達実績、飛行実証データの蓄積である。Draper の実飛行成功(後述)は模倣困難な実績となる。一方で、大型液体エンジン領域では飛行実績で先行する競合に対しキャッチアップ途上であり、切り替えコストや規模の経済で確立した優位はまだ限定的である。

実績と成長性

2026年1月27日、AFRL が Teledyne Brown の ET-2 標的ミサイルに Draper エンジンを統合し地上発射、貯蔵性液体エンジンによる極超音速級ミサイルの初飛行を実証した(出典: Breaking Defense / Air & Space Forces Magazine, 2026年)。続く2026年2月、マッハ5超・低コスト量産を狙う中距離極超音速システム「HAVOC」を発表した(出典: PRNewswire, 2026年2月)。

防衛実績としては、AFRL の2,860万ドル契約(応答的宇宙・極超音速・軌道上推進、2025年5月)、非公表の防衛企業からの Draper 向け3,490万ドル契約(2025年9月)、海軍 NEST プログラム下で SM-2/SM-3/SM-6 を駆動する Mk 104 デュアルモーターの3Dプリント設計開発などがある(出典: PRNewswire / DefenseScoop)。宇宙実績では Stratolaunch 向けに Hadley を供給し、同機の極超音速試験機 Talon-A に用いられた。

財務情報は非公開だが、代替指標として2025年第3四半期までの受注1億1,500万ドル超、複数の極超音速・戦術ミサイル飛行成功、Draper の初飛行、Ripley(50,000ポンド)の再設計・燃焼試験完了などが確認できる(出典: Ursa Major, 2025年11月)。受注は政府・民間の双方に広がっている。

資本政策と投資評価

累計調達額は、Series E 前の PitchBook 系データで9ラウンド約4億9,700万ドル、これに2025年11月の Series E 1億ドルを加え約6億ドル規模とみられる(出典: Tracxn / GovCon Wire, 2025年)。主な資金調達歴は、2017年の800万ドル(Space Angels 参加)、2021年12月の Series C 8,500万ドル(BlackRock 運用ファンド主導)、2024年の固体ロケットモーター事業立ち上げに向けた1億3,800万ドル調達、そして2025年11月18日の Series E 1億ドル(Eclipse 主導、Woodline Partners・Principia Growth・XN・Alsop Louie Partners 参加)と5,000万ドルのデット枠設定である(出典: Ursa Major / SpaceNews, 2025年)。

Series E 時点のバリュエーションは約6億ドルと報じられている(出典: Bloomberg, 2025年11月)。受注1億1,500万ドル超に対し約6億ドルの評価は、防衛需要の成長期待を織り込んだ売上マルチプルとみられる。資金使途は各製品ラインの製造・量産スケールアップ。政府開発契約が実質的な補助的資金源となっている。今後、大型液体エンジンの実証や SRM 量産に向け追加調達が必要になる可能性がある(推測)。出口は防衛大手による M&A、ないし規模拡大後の IPO が想定される(推測)。

総合評価

一言で言えば「特定の機体に縛られない独立系ロケット推進メーカーが、米国の SRM・極超音速供給不足を商機に防衛へ大転換した企業」である。顧客がこの企業を選ぶ最大の理由は、Lynx による短納期・分散生産と、貯蔵性液体 Draper という他社にない即応性能。最も強い競争優位は、政府が明確に後押しする SRM 新規参入という追い風と、飛行実証済みという模倣困難な実績である。

最大の事業リスクは、大型液体エンジン(Ripley/Arroway)の実証遅延と、量産立ち上げに伴う固定費負担、そして防衛予算・調達方針への依存度の高さ。今後3〜5年の成長ドライバーは、HAVOC を含む極超音速ミサイルの量産受注、NEST など SRM の実配備、Draper の防衛採用拡大である。競合との相対位置では、SRM の2大寡占に対する新興挑戦者群(X-Bow・Anduril)の一角として、推進技術の幅で先行する。情報不足で判断できない点は、正確な直近従業員数、粗利率・営業損益などの財務実態、受注残(バックログ)の内訳である。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立2015年、米コロラド州ベルソウドWikipedia, 2026年
創業者/CEO創業 Joe Laurienti / CEO Dan Jablonsky(元 Maxar)Ursa Major, 2024年8月
分類Space Access · Build · PropulsionSeraphim Map 2026
主力製品Hadley/Ripley/Arroway/Draper 各エンジン、Lynx 固体モーターFlightGlobal 他, 2025-26年
主要顧客DoD、AFRL、海軍、Stratolaunch、BAE SystemsUrsa Major, 2025年11月
直近受注2025年 Q3 までで累計1億1,500万ドル超Ursa Major, 2025年11月
主要契約AFRL 2,860万ドル(5月)、Draper 3,490万ドル(9月)PRNewswire, 2025年
主要実証Draper 初飛行(ET-2 統合、地上発射)Breaking Defense, 2026年1月27日
累計調達約6億ドル規模(Series E 含む)+5,000万ドル デットTracxn / GovCon Wire, 2025年
直近ラウンドSeries E 1億ドル、Eclipse 主導Ursa Major, 2025年11月18日
バリュエーション約6億ドルBloomberg, 2025年11月
主要競合Northrop Grumman、Aerojet Rocketdyne(L3Harris)、X-Bow、AndurilBreaking Defense, 2023年
事業の強さ8/10本レポート評価

情報源