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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Access Supply

Velo3D

サポートレス金属3Dプリントで宇宙・防衛部品の量産を狙う米国の装置メーカー

Velo3D logo

公式サイト: velo3d.com

設立
2014年
米カリフォルニア州フリーモント
従業員
約130〜195人
2026年時点・データソースにより幅
累計調達(推測)
約4.5億ドル超
VC+SPAC+公募、2026年時点

基本情報

Velo3Dは2014年にBenny Buller(元Khosla Ventures投資家)が設立した金属積層造形(レーザー粉末床溶融結合、LPBF)装置メーカー。本社は米カリフォルニア州フリーモントで、2026年6月に約28.9万平方フィートのリバモア新工場を発表し生産能力を3倍化する計画を進めている(PR Newswire、2026年6月30日)。2021年9月にSPAC合併(JAWS Spitfire)で上場し当時の評価額は約16億ドル(2021年基準)。その後業績悪化でNYSE上場廃止となり、2025年1月にArrayed Additive傘下のArrayed Notes Acquisition Corp.が約2,240万ドル(2025年基準)の債務株式化により普通株の95%を取得。2025年8月にNasdaqへ再上場(ティッカーVELO)した(SEC 8-K、3DPrint.com)。現CEOはArrayed Additive出身のArun Jeldi。従業員数は外部データベースで約130〜195人と幅がある(PitchBook、LeadIQ、2026年)。Seraphim Ecosystem Map 2026ではSpace Access配下のSupply(Advanced Manufacturing)に分類される。宇宙専業ではなく、防衛、航空、エネルギー、半導体装置にも展開するが、売上の中核は宇宙・防衛である。

顧客課題と製品

主な顧客はロケット・衛星メーカー(SpaceX、過去にLauncher、Ursa Major等)、防衛プライム(Lockheed Martin、Raytheon)、極超音速機のHermeus、Honeywell、GM、Lam Researchなど。顧客の課題は、燃焼室・ターボポンプ・熱交換器など複雑形状の金属部品を、鋳造・鍛造・機械加工では実現できない一体構造で、しかも量産品質で作ることにある。

主力製品はLPBF装置のSapphireファミリー(Sapphire、大型のSapphire XC、最大高さ1mのXC 1MZ)で、ハードウェアに加え、前工程ソフトのFlow、印刷中の品質監視ソフトのAssureを統合提供する。最大の技術差別化は「サポートレス印刷」で、通常45度未満の低角度形状に必要な支持材をほぼ不要にし、ゼロ度オーバーハングまで印刷できる。非接触リコーターとクローズドループのプロセス制御により、80点超の部品を1つの連続形状に統合できると謳う(公式サイト)。装置検証済みのプリントレシピを別拠点の同型機に移せる再現性も売りで、分散製造やサージ生産に向く。導入をためらう要因は、装置価格の高さ、粉末床方式共通の後処理負担、そして後述する稼働率・信頼性への疑義である。

2025年には自社工場で部品を受託生産するRapid Production Solutions(RPS)を開始し、顧客が装置を買わずに量産部品を調達できるモデルを追加した(公式プレスリリース、2025年)。

ビジネスモデル

収益は(1)装置売り切り(推定1台約60万〜200万ドル超、機種・構成により異なる。2021年時点でSapphireは60万ドル超、XCは200万ドル級との報道)、(2)保守・サポートの継続収益、(3)粉末等の消耗材、(4)RPSによる部品受託生産、(5)技術ライセンス(2024年にSpaceXへ約800万ドルのIPライセンス・サービス契約、Metal AM誌)から成る。装置販売が中心のため受注から売上計上まで数四半期を要し、四半期変動が大きい。FY2025の粗利率はマイナス16.1%(約700万ドルの在庫評価損を含む)と装置ビジネスとしては極めて低いが、2026年Q1には17.2%まで改善した(SEC提出資料、2026年5月)。RPSと保守の比率が上がれば継続収益と稼働率で利益率が改善する構造だが、リバモア工場拡張(最大100台超の装置設置構想)は固定費を大きく積み増すため、需要が伴わなければ逆に重荷になる。

市場と競争力

対象市場は金属積層造形装置・部品製造で、宇宙・防衛向けが成長ドライバー。金属AM市場全体は数十億ドル規模で年率2割前後の成長とされる(業界推計、推測)。競合はEOS(独)、Nikon SLM Solutions、Colibrium Additive(GE Aerospace系)、3D Systems、Renishaw、および中国系の低価格機。従来手段は鋳造・鍛造・5軸加工と、支持材を許容する既存LPBF機である。

Velo3Dの優位性はサポートレス印刷による設計自由度と後処理削減、装置間でレシピを移植できる量産再現性、米国製装置としてのITAR・防衛調達適合性にある。2025年12月には国防総省Defense Innovation UnitのProject FORGEで総額3,260万ドルのOTA契約を獲得し(公式IR、2025年12月)、防衛サプライチェーンの国産化(リショアリング)という追い風に乗る。一方で、空冷や自動化の面で競合大手に劣り、稼働率が低く運用に多くの人手を要するという業界専門家の指摘が短期売り推奨レポートで報じられており(Morpheus Research、2026年6月25日)、技術優位がどこまで持続的な堀になるかは検証が必要である。顧客の切り替えコストは部品認定(クオリフィケーション)に紐づくため一度採用されれば高い。

実績と成長性

SpaceXが最大の実績顧客で、2024年末までにSapphire系26台を出荷し、Raptorエンジン部品等に使われた。ただしSpaceXは2022年以降新規装置を購入しておらず、2024年売上の23%を占めた同社比率は2025年に10%未満へ低下した(SEC資料、Morpheus Research経由、2026年)。宇宙での実利用実績は豊富で、商用化段階は「量産移行期」にある。近年は防衛シフトが鮮明で、DIUのProject FORGE(3,260万ドル、2025年12月)、米防衛プライムからの複数年フルレート生産契約(1,150万ドル、2026年、VoxelMatters)、受託製造パートナーMears MachineによるXC 5台目発注(2026年7月)などが続く。

財務はFY2025売上4,600万ドル(装置・部品売上は前年比54%増)、営業費用4,750万ドル、期末現金3,900万ドル、受注残3,100万ドル(2025年12月末)。2026年Q1売上は1,380万ドルで前年同期比48%増、会社は2026年通期売上6,000万〜7,000万ドルと2026年後半のEBITDA黒字化を掲げる(公式IR、2026年)。なお2022年の売上は約8,000万ドルであり、現在の水準はピーク回復途上に過ぎない点に注意。

資本政策と投資評価

累計調達はSPAC前のVC調達(Khosla Ventures、Bessemer等で約1.5億ドル規模、推測)、2021年SPACで純額約2.74億ドル、2025年8月の公募1,750万ドル(3.00ドル/株)などを合わせ約4.5億ドル超(推測)。2025年1月のArrayed Additiveによる95%取得後、同社が支配株主である。株価は再上場後に2.81ドルから31.75ドルまで急騰し、2026年6月11日時点の時価総額は約8.8億ドルに達したが、6月25日のMorpheus Researchによる空売りレポート(CEO経歴詐称疑義、SpaceX関係の形骸化、防衛契約の実質受注額の少なさ、財務統制の重要な不備7件などを指摘)で急落し、6月26日時点で約5.0億ドルとなった(stockanalysis.com、Benzinga、2026年6月)。売上マルチプルは2026年ガイダンス中央値ベースで約7〜8倍(推測)と、金属AM同業(1〜3倍程度)比で依然プレミアム。Needhamは同日80%上昇余地と強気評価を出しており、市場の見方は真っ二つである(Benzinga、2026年6月)。リバモア拡張の設備投資を考えると、追加調達の可能性は高い(推測)。

総合評価

一言で言えば「ロケットエンジンを印刷してきた技術力と、経営・財務の脆弱さが同居する再建途上の装置メーカー」である。顧客が選ぶ最大の理由はサポートレス印刷による設計自由度と、米国製・防衛適合という調達要件への合致。最大のリスクは、粗利率が構造的に低いまま大型工場拡張の固定費を抱えること、支配株主・経営陣へのガバナンス疑義、EOSやNikon SLMなど資本力で勝る競合の存在。今後3〜5年の成長ドライバーは防衛リショアリング需要とRPSによる部品受託の拡大。投資対象としては、実需(受注残・防衛契約)の積み上がりに対して評価額が先行しており、ハイリスク。空売りレポートの指摘の当否(装置稼働率、契約の実質金額)は現時点の公開情報だけでは判断できない。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立 / 本社2014年 / 米カリフォルニア州フリーモントSEC資料
創業者 / 現CEOBenny Buller / Arun JeldiSEC、3D Printing Industry(2025)
分類Space Access · Supply · Advanced ManufacturingSeraphim Map 2026
主力製品Sapphire / Sapphire XC / XC 1MZ、Flow・Assureソフト、RPS受託生産公式サイト(2026)
技術差別化サポートレス印刷(ゼロ度オーバーハング)、レシピ移植性公式サイト
主要顧客SpaceX(26台出荷、新規購入は2022年まで)、Lockheed、Raytheon、Hermeus等SEC、公式(2024-2026)
FY2025売上4,600万ドル、粗利率マイナス16.1%(在庫評価損含む)公式IR(2026年3月)
2026年Q1売上1,380万ドル(前年比48%増)、粗利率17.2%公式IR(2026年5月)
受注残3,100万ドル(2025年12月末)公式IR
2026年ガイダンス売上6,000万〜7,000万ドル、後半EBITDA黒字化公式IR(2026)
防衛契約DIU Project FORGE 3,260万ドル(2025年12月)、プライム向け1,150万ドル(2026)公式IR、VoxelMatters
資本Arrayed Additiveが95%取得(2025年1月)、Nasdaq再上場・1,750万ドル調達(2025年8月)SEC、3DPrint.com
時価総額約8.8億ドル(6/11)から約5.0億ドル(6/26)へ急落stockanalysis.com(2026年6月)
主要リスク空売りレポートによる経歴・契約実態の疑義、低粗利、競合、財務統制の不備Morpheus Research(2026年6月25日)

情報源