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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Segment In Space Economy

Orbit Fab

軌道上で衛星に燃料を補給する宇宙のガソリンスタンド。給油口RAFTIの標準化を狙う

Orbit Fab logo

公式サイト: orbitfab.com

設立
2018年
米コロラド州ラファイエット
従業員
約50〜70名
2026年時点(推測)
累計調達
約6270万ドル+
2026年時点

基本情報

Orbit Fabは2018年に設立された米国の軌道上燃料補給(In-space refueling)企業である。本社は米コロラド州ラファイエット。「宇宙の推進剤サプライチェーンを構築する」を掲げ、社内では自らを「宇宙のガソリンスタンド(Gas Stations in Space)」と表現する。(情報源: 公式About、2026年7月閲覧)

共同創業者はDaniel Faber。2022年には英国オフィスを開設し、約24名体制で欧州展開を進めた。2026年7月、私募エクイティ出身のPeter Shaper(旧CapRock Communications、Speedcast CEO)が新CEOに就任し、創業者Faberから経営を引き継いだ。従業員数は正式公表されていないが、複数のデータベース情報から2026年時点でおおむね50〜70名規模と見られる(推測)。(情報源: SpaceNews「Orbit Fab hires new CEO」2026年7月)

Seraphim Ecosystem Map 2026上の分類はSpace Segment内のIn-Space Economy、Space Services。宇宙専業であり、軌道上サービス(OOS)のなかでも燃料補給に特化している。

顧客課題と製品

主な顧客は、米国防総省・宇宙軍などの政府防衛機関、静止軌道(GEO)の通信衛星オペレーター、そして軌道上サービス事業者(Astroscaleなど)である。

衛星が抱える最大の課題は「燃料切れ=寿命」という構造である。高価なGEO衛星でも搭載推進剤を使い切れば運用終了となり、機体自体が健全でも廃棄せざるを得ない。防衛用途では、脅威に応じて軌道を機動的に変える(マヌーバする)ほど燃料を消費し、燃料が作戦上の制約になる。

Orbit Fabの製品構成は以下の通り。

  • RAFTI(Rapidly Attachable Fluid Transfer Interface): 衛星側に取り付ける標準給油口(ハードウェア)。地上での燃料充填と軌道上での再補給の両方に対応する。従来2個必要だったfill-and-drainバルブの機能を1個に集約する。価格は1個あたり3万米ドル(2024年発表)。(情報源: TechCrunch、SpaceNews 2024年3月)
  • 燃料デポ(NEST)・シャトル(RAVEN): 軌道上に燃料を備蓄するタンク(デポ)と、そこから顧客衛星へ燃料を運ぶ機体(サービス)。
  • GRIP/UMPIRE: 補給時のドッキング・流体移送を支える機器類。

導入前は衛星寿命が燃料量で固定されるが、導入後はRAFTI搭載機であれば軌道上で再補給し寿命延長・機動運用が可能になる。乗り換え理由は、RAFTIが宇宙軍に軍用衛星向け補給インターフェースとして承認された「事実上の標準」である点。ためらう理由は、実際の軌道上補給がまだ実証段階(初回デモは2026年)であり、給油口を積んでも実際に燃料が届く保証がまだ薄いことである。

ビジネスモデル

収益源は大きく2つ。第1に給油口RAFTIの売り切り(1個3万米ドル)。第2に燃料そのものの従量販売である。GEOでの補給価格として、ヒドラジン最大100kgあたり一律2000万米ドル(2021年発表、約1kgあたり20万米ドル)という透明価格を公表した。SpaceXの打ち上げ価格公開に倣い、顧客が事業計画に補給費を織り込めるようにする狙いである。(情報源: Payload 2021年)

RAFTIは低単価・薄利だが、燃料販売と補給サービスは高単価で継続収益になり得る。RAFTIを多数の衛星に「標準」として先行搭載させ、後から燃料という消耗品を繰り返し売るという、プリンター本体とインクに近い構造を志向している。デポ・シャトルは製造・打ち上げに多額の固定費を要し、稼働率が上がるまで利益率は低い。顧客獲得から実際の燃料売上計上までのリードタイムは長い(給油口搭載から数年後の補給)。CEOのShaperは2026年7月時点で契約バックログが4000万米ドル超と述べており、これは実証成功後に売上化する見込みである。

市場と競争力

対象市場は軌道上サービス(OOS)のうち燃料補給。市場調査各社は在軌道リフューリング市場が2030年代に向けて年率二桁で拡大すると見込む(調査会社により幅あり)。

主要競合はNorthrop Grumman、Astroscaleである。ビジネスモデルに差がある。Northropはデポを介さず自機のタンク(GAS-T)で直接ドッキング補給する方式で、2027年にTetra-6衛星のPRM給油口で実証予定。AstroscaleとOrbit Fabはデポを軌道上に常設する長期供給型で、両社は協業関係にもある。従来の代替手段は「補給せず衛星を使い捨てる」ことであり、Orbit Fabの真の競合はこの現状維持である。

Orbit Fabの優位性は、RAFTIが宇宙軍Space Systems Commandに軍用衛星向けの承認インターフェースとして認定された点にある。標準を握れば、給油口が普及するほど後発の異方式は不利になり、切り替えコスト・ネットワーク効果・参入障壁が働く。RAFTIは公式発表で商用100機超+DoD 4機に設計採用(ベースライン)されたとされる。(情報源: Orbit Fab公式 2026年)今この市場が立ち上がる理由は、防衛側が機動運用のために燃料制約の解消を強く求め始め、政府がDIUのRAPIDS計画などで実証資金を投じているためである。(情報源: 公式、SpaceNews、Air & Space Forces Magazine 2025〜2026年)

実績と成長性

  • 宇宙軍/DIU: 国防イノベーションユニット(DIU)のRAPIDS計画でデポ契約約1330万米ドルを獲得。RAFTIは軍用補給の承認標準に認定。(情報源: 各種報道 2025年)
  • Tetra-5実証: 2026年6月、Orbit Fabの初号デポがAstroscaleの補給機と同一ロケットで打ち上げ予定。Impulse Space製機体がデポをホストし、宇宙軍Tetra-5衛星へRAFTI経由でヒドラジンを補給する初の軌道上デモを目指す(補給機Astroscale APS-Rは満タンで約30kg=66ポンドのヒドラジンを搭載)。(情報源: Space.com、SpaceNews 2026年)
  • Astroscale US: 同社LEXIサービス機隊向けに燃料1トンの購入で合意(初期の商用需要実績)。
  • 欧州ASTRAL: 2025年11月、英宇宙庁・ESAの資金最大約380万ドルを得て欧州コンソーシアムを主導。RAFTI/GRASP給油口を2028年までに軌道上実証する計画。(情報源: SpaceWatch.Global、Payload 2025年11月)

売上・粗利などの財務は非公開。代替指標では、新CEO招聘、契約バックログ4000万米ドル超、RAFTIの100機超採用、英・欧への拠点拡張が成長を示す。ただし現時点で軌道上補給の商用実績はゼロで、2026年のTetra-5が最初の真の試金石となる。

資本政策と投資評価

累計調達額は公開データベース(Tracxn)で12ラウンド計約6270万米ドル、投資家29社(2026年時点)。主なマイルストーンは、2019年に約300万ドル、2023年4月にシリーズA 2850万ドル、2026年3月に2000万ドル。加えて2026年7月、Stride Capital主導で2500万ドル超のつなぎ資金を調達し、同社創業者Don Rogersと元空軍少将Roger Teagueが取締役に就任した。(情報源: Tracxn、SpaceNews 2026年7月)

これらを合算すると累計調達は約8000万〜9000万ドル規模に達すると見られる(推測)。会社は現在、3000万〜5000万ドルのシリーズBを狙っており、これは2027年の少なくとも2件のデモと初期商用契約までの資金をカバーする位置づけである。政府契約(DIU約1330万ドル)や政府補助(ESA/UK約380万ドル)を受注実績として持つ。バリュエーションは非公開。出口はM&AまたはIPOが想定されるが、まず軌道上実証の成功が前提となる。デモの成否と調達環境次第で、シリーズB後もさらなる資金調達が必要になる可能性が高い(推測)。

総合評価

一言で表せば「衛星の燃料切れという構造的寿命問題を解く、標準規格先行型の宇宙のガソリンスタンド」である。顧客がOrbit Fabを選ぶ最大の理由は、RAFTIが宇宙軍に承認された事実上の標準であり、多数機に先行搭載が進んでいる点。最強の競争優位は、この標準ポジションが生む切り替えコストとネットワーク効果である。

最大の事業リスクは、2026年Tetra-5をはじめとする軌道上補給デモの技術的失敗、および実証前の資金枯渇。今後3〜5年の成長ドライバーは、防衛需要(機動運用)の顕在化、Tetra-5成功による4000万ドル超バックログの売上化、欧州ASTRALの前進である。投資対象としては、標準を握る先行者としての魅力は高いが、実証未達・長いリードタイム・資本集約性ゆえハイリスク・ハイリターン。競合Astroscale(協業かつ競合)・Northrop(自己資本力)との相対では、規格支配力で優位だが実行資本で見劣りする。財務詳細と最新の従業員数・バリュエーションは非公開で判断できない。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立/本社2018年/米コロラド州ラファイエット公式About 2026年7月
CEOPeter Shaper(2026年7月就任、創業者Daniel Faberから交代)SpaceNews 2026年7月
主力製品給油口RAFTI(3万ドル/個)、燃料デポ、燃料販売TechCrunch/SpaceNews 2024年
燃料価格GEOでヒドラジン最大100kg一律2000万ドル(約20万ドル/kg)Payload 2021年
RAFTI採用商用100機超+DoD 4機に設計採用(ベースライン)Orbit Fab公式 2026年
政府契約DIU RAPIDSデポ契約約1330万ドル、ESA/UK ASTRAL約380万ドル各種報道 2025年
主要顧客米宇宙軍、Astroscale US(燃料1トン)、ESA/UKPayload等 2021〜2025年
初の軌道上実証Tetra-5、2026年6月打ち上げ予定、APS-Rが約30kg(66ポンド)搭載Space.com/SpaceNews 2026年
累計調達約6270万ドル+(2026年3月まで)+2026年7月つなぎ2500万ドル超Tracxn/SpaceNews 2026年
契約バックログ4000万ドル超(実証成功後に売上化見込み)SpaceNews 2026年7月
主要競合Northrop Grumman、Astroscale、Clear Space、ObrutaSpaceNews等 2026年

情報源