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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Segment In Space Economy

Space Forge

軌道上で高純度半導体結晶を製造する英国の再使用型製造衛星ベンチャー

Space Forge logo

公式サイト: spaceforge.com

設立
2018年
英国ウェールズ・カーディフ
従業員
約70名
2024年時点
累計調達
約57億円
約£30M・2025年時点(推計)

基本情報

Space Forge は2018年に Joshua Western(CEO)と Andrew Bacon(CTO)が設立した英国の宇宙製造ベンチャーである。両創業者はともに Thales Alenia Space の出身で、当初は英国ブリストルのガレージから事業を始めた(出典: CNN、Wikipedia、2025年)。本社は現在ウェールズのカーディフ(Rumney地区)にあり、以前バーガーバン製造に使われていた約7,500平方フィートのクリーンルーム施設を製造拠点とする。従業員数は2024年時点で約70名(出典: Wikipedia、2024年)。ウェールズは Compound Semiconductor Applications Catapult(CSAC)や Centre for Integrative Semiconductor Materials(CISM)など半導体クラスターを擁し、同社の立地はこの産業集積を意図的に利用したものである。

Seraphim Ecosystem Map 2026 上の分類は Space Segment > In-Space Economy > In-Space Materials Manufacturing。宇宙専業であり、他産業への横展開はしていない。ただし最終製品(半導体材料)の顧客は半導体・防衛・通信・量子コンピューティングといった地上の巨大産業であり、宇宙を「製造手段」として使う点に特徴がある。

顧客課題と製品

主力製品は再使用型の製造衛星 ForgeStar である。微小重力・超高真空・極端な温度差という軌道上の環境を使い、地上では作れない高純度の半導体結晶を製造する。地上では重力が溶融材料に対流を生じさせ結晶が不均一に成長するが、微小重力下では対流がなく、窒素混入の少ない超高真空も得られるため、地上比で「数桁クリーンな」結晶が作れると同社は主張する(出典: semiconductor-today、2025年12月)。

対象材料はワイドバンドギャップ/ウルトラワイドバンドギャップ半導体で、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、ダイヤモンドなど。これらは5G基地局の電力効率、EVのパワー半導体、AIデータセンターの電源、量子コンピューティング、防衛システムで需要が高い。顧客が抱える課題は、これら化合物半導体の結晶欠陥がデバイス性能・歩留まり・消費電力を制約している点にある。導入後は欠陥の少ない結晶により、同社の説明では通信インフラの消費電力削減などが期待される。実際に BT(英国通信大手)が5G基地局効率向上のため同社の結晶材料を試験している(出典: TechCrunch、2025年5月)。

ハードウェア面では、製造衛星本体に加え、地球帰還のための傘状の展開式ヒートシールド Pridwen、着水回収用のネットシステム Fielder を自社開発している。ビジネスモデルは「宇宙で結晶の種(シード)を育て、地上の CISM でスケールさせる」ハイブリッド型を掲げる(出典: semiconductor-today、2025年12月)。顧客が既存手段(地上の結晶成長)から乗り換える理由は品質そのものだが、ためらう理由はコスト・打ち上げ依存・量産実証がまだ無い点にある。

ビジネスモデル

料金を支払うのは最終的に半導体・通信・防衛メーカーである。収益モデルは現時点で確立途上であり、(推測)将来的には製造した材料の売り切り(素材販売)、または軌道上製造キャパシティの受託・従量課金が中心になると見られる。2025年時点では商用売上はごく限定的で、政府補助金・ESA契約・VC資金が事業を支える段階にある。

構造的には、打ち上げコストが最大の変動費であり、ForgeStar-2 では「材料の価値が打ち上げコストを上回る」ことを目標に、年10〜12回の飛行頻度を掲げる(出典: Wikipedia、TechCrunch、2025年)。再使用・回収が実現すれば1機あたりの償却が効き、粗利率は改善しうる。ただし現段階は資本集約的で、衛星製造・クリーンルーム・回収インフラ(ポルトガル・アゾレス諸島に欧州回収拠点を計画)といった固定費が重い。継続収益やアップセルは、量産・回収サイクルが確立して初めて成立する構造である。顧客獲得から売上計上までのリードタイムは打ち上げ・帰還を挟むため長い。

市場と競争力

対象市場は「宇宙内製造(In-Space Manufacturing)」および化合物半導体材料。前者は黎明期で市場規模の推計にばらつきが大きいが、後者の GaN/SiC パワー半導体市場は地上だけで数十億ドル規模かつ二桁成長が続く巨大市場である。主要競合は米国の Varda Space Industries(当初は医薬品結晶に注力し回収カプセルを既に地球帰還させている)と Redwire(宇宙製造・組立の先行企業)。従来の代替手段は地上の結晶成長装置および国際宇宙ステーション(ISS)での実験だが、ISS は商用専有の自由飛行体ではない。

Space Forge の差別化は、(1)半導体材料に特化した自由飛行の商用製造衛星である点、(2)再使用・地球帰還を前提とした Pridwen/Fielder という独自回収技術、(3)英国・欧州で唯一の軌道上先進製造ライセンスを取得済みという規制先行にある(出典: 公式サイト、2025年)。ForgeStar-1 は「宇宙で運用された史上初の自由飛行の商用半導体製造ツール」と位置づけられ、2025年12月には軌道上で1,000℃の炉を稼働させプラズマ生成に成功した(出典: semiconductor-today、2025年12月)。参入障壁は技術的難度(極端環境での自律製造)、ライセンス・規制対応、そして数十年の材料科学の蓄積を実装した設計にある。CEO は競争優位を「これがどれほど難しいか」というエンジニアリング難度そのものだと表現している(出典: TechCrunch、2025年)。

なぜ今かという点では、SpaceX による打ち上げコスト低下、GaN/SiC 需要の急拡大、そして半導体サプライチェーンの安全保障化(NATO 系資金の流入)が同時に立ち上がっていることが背景にある。

実績と成長性

  • ForgeStar-0(2023年1月): Virgin Orbit の LauncherOne で打ち上げるも、ロケット側の失敗で軌道到達せず(出典: Wikipedia)。
  • ForgeStar-1(2025年6月23日): SpaceX Falcon 9 の Transporter-14 相乗りで打ち上げ成功。英国初の軌道上製造衛星。2025年12月に炉稼働・プラズマ生成という世界初の商用実証を達成(出典: 公式サイト、semiconductor-today、2025年)。制御された軌道離脱(demise)も安全実証の一環とする。
  • ForgeStar-2: 開発中。地球帰還・材料回収を狙う次世代機で、年10〜12回の飛行頻度を目標。

契約・提携の実績として、2021年9月に ESA の Boost! プログラムで約200万ユーロの契約(Clyde Space、Goonhilly、CSAC 等と連合)、2025年9月には米 United Semiconductors LLC と III-V 族結晶成長・ウェハ処理の共同開発 MoU を締結。防衛系では Northrop Grumman がパートナーに挙げられ、通信では BT が材料試験を実施している(出典: TechCrunch、Wikipedia、2025年)。

財務情報は非公開。代替指標としては、従業員約70名(2024年)、7,500平方フィートのクリーンルーム、英国・欧州唯一の軌道製造ライセンス、UK 空間技術史上最大規模の Series A、複数の政府・防衛系顧客との提携が成長の裏付けとなる。ただし商用量産・継続売上はまだ立ち上がっていない段階である。

資本政策と投資評価

累計調達額は、シード段階で総額約760万ポンド(2020〜2021年、Type One Ventures・Space Fund 主導の「当時最大級」のシードを含む)、加えて2025年5月14日に完了した Series A 約2,260万ポンド(約3,000万ドル)で、累計およそ3,000万ポンド(推計、2025年時点)。この Series A は英国宇宙テック史上最大の Series A と報じられた(出典: 公式サイト、TechCrunch、finsmes、2025年5月)。

Series A のリードは NATO Innovation Fund、共同で気候テック VC の World Fund、さらに National Security Strategic Investment Fund(NSSIF)、British Business Investments、Cardiff Capital Region 系の Innovation Investment Capital、SpaceVC、Gaingels 等が参加。NATO・国家安全保障系ファンドの主導は、同社が防衛・経済安全保障の文脈で戦略的資産と見なされていることを示す。初期には元 Virgin Galactic CEO の George Whitesides や Voyager Space の Dylan Taylor もエンジェル出資している。

バリュエーションは非公開。政府補助金(Innovate UK、Development Bank of Wales)と ESA 契約が資本の一部を補完している。資金使途は ForgeStar-2 の開発と ForgeStar-1 運用。量産・回収インフラの構築には追加資本が必要で、(推測)ForgeStar-2 の実証成否を踏まえた次回ラウンド(Series B)が今後2〜3年内に必要になる可能性が高い。M&A や IPO は現時点で具体化していないが、防衛・半導体安保という文脈から戦略的買収の対象になりうる。

総合評価

一言で言えば「宇宙を工場にして地上で作れない高純度半導体結晶を作る、英国・欧州唯一の軌道上製造企業」である。顧客がこの企業を選ぶ最大の理由は、微小重力による桁違いの結晶品質と、それを実際に軌道で稼働させ実証した唯一性。最も強い競争優位は、半導体特化 × 再使用回収技術 × 欧州唯一の製造ライセンスという組み合わせと、NATO 系資本による安全保障上の裏付けである。

最大の事業リスクは、(1)地球帰還・回収(Pridwen/Fielder)がまだ本格実証されておらず、量産経済性が未証明、(2)打ち上げコスト依存、(3)商用売上がほぼ立っていない資金依存体質。今後3〜5年の成長ドライバーは ForgeStar-2 による材料回収の実証と、GaN/SiC 需要・半導体安保の追い風である。相対的位置は、医薬で先行する Varda、宇宙インフラ全般の Redwire に対し、Space Forge は「半導体材料に特化した欧州の旗手」というニッチ独占ポジション。投資対象としては、量産・回収の実証前でリスクは高いが、成功時のアップサイドと安全保障プレミアムが大きいディープテック案件。情報不足で判断できない点は、具体的な受注残・商用売上・バリュエーション・粗利構造である。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立2018年、英国ウェールズ・カーディフWikipedia、2025年
創業者Joshua Western(CEO)、Andrew Bacon(CTO)/ 元 Thales Alenia SpaceCNN・Wikipedia、2025年
従業員約70名Wikipedia、2024年
分類Space Segment > In-Space Economy > In-Space Materials ManufacturingSeraphim Map 2026
主力製品再使用型製造衛星 ForgeStar、回収技術 Pridwen/Fielder公式・TechCrunch、2025年
製造対象GaN・SiC・AlN・ダイヤ等の高純度半導体結晶semiconductor-today、2025年12月
主要実証ForgeStar-1 が2025年6月打ち上げ、12月に軌道上でプラズマ生成成功公式・semiconductor-today、2025年
主要顧客・提携BT、Northrop Grumman、United Semiconductors、ESATechCrunch・Wikipedia、2025年
累計調達約3,000万ポンド(シード約760万+Series A 約2,260万)公式・TechCrunch、2025年5月(推計)
Series A2025年5月、約2,260万ポンド(約3,000万ドル)/ 英国宇宙テック最大finsmes・公式、2025年5月
主要投資家NATO Innovation Fund、World Fund、NSSIF、British Business Investments公式・TechCrunch、2025年
収益モデル未確立(素材販売/受託を想定)、現状は補助金・VC依存各種報道、2025年
バリュエーション非公開確認できず
事業の強さ6/10本レポート評価

情報源