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Keiichi HayashiK1884 Research Technology Space Industry Space Segment Satcom Pnt

Myriota

10年電池駆動を実現する超低消費電力の直接衛星IoT接続を、月1ドル未満から提供する豪州企業

Myriota logo

公式サイト: myriota.com

設立
2015年
豪州アデレード
従業員
約45〜73名
2024〜25年時点(推計)
累計調達
約8,000万〜1億豪ドル超
2024年12月時点

基本情報

Myriota(ミリオタ)は2015年設立、南オーストラリア州アデレードに本社を置く衛星IoT接続の専業企業である。南オーストラリア大学(University of South Australia)での通信理論研究を母体としてスピンアウトした。共同創業者は Alex Grant(創業CEO、2022年4月に非業務執行取締役へ移行)と David Haley(共同創業者・CTO)。現CEOは2022年4月に最高商務責任者から昇格した Ben Cade(出典: Myriota「Ben Cade Appointed CEO」2022年、space.gov.au「Ten Years of Myriota」)。

従業員数は非公開だが、Tracxn は2024年時点で約45名、RocketReach は約73名としており、実数は数十名規模とみられる(推測)。2024年12月の資金調達に際して「今後最大100人の高スキル雇用創出」を掲げており、拡大局面にある。本社の研究開発と製造をアデレードに集約しつつ、米国・カナダ・スイス・ペルー・アルゼンチン・ブラジル・英国に拠点を持ち、2025年にメキシコ拠点を開設した(出典: Myriota「$50M Funding」2024年12月)。

Seraphim Ecosystem Map 2026 の分類は Space Segment > Satcom & PNT > IoT。宇宙専業だが、実質的にはIoT・産業データ通信という他産業向けサービスを衛星で提供する形態である。

顧客課題と製品

主な顧客は、携帯電話網の届かない遠隔地に資産・センサーを持つ産業ユーザーである。具体的には農業(家畜追跡、土壌水分、水槽・給水ポンプ監視)、水管理、鉱業、重機、物流、環境モニタリング、そして政府・防衛(豪州国防省が採用実績)。顧客の課題は明快で、「セルラー圏外の広大な現場で、低コスト・低消費電力かつ長期無保守でセンサーデータを吸い上げたい」というものだ。

主力製品は次の通り(出典: Myriota公式サイト2026年時点)。

  • UltraLite — 超低消費電力の直接衛星(direct-to-orbit)接続。衛星の軌道モデルを端末が内蔵し、衛星が上空にある時だけ起動・送信するため、単三電池2本で最長10年の「設置して放置」運用が可能。小容量テレメトリ向け。
  • HyperPulse — 2025年12月に商用化した、IoT向けとしては世界初を謳う5G NTN(非地上系ネットワーク)。3GPP Release 17 の NB-IoT NTN 準拠で、双方向・低遅延・ファームウェア更新に対応。
  • AssetHawk — 5G NTN対応の堅牢な資産トラッカー。BLEセンサー連携。ハイブリッドサービスの主力端末。
  • FlexSense — 各種監視向けの遠隔センシング端末。

これらは「ハードウェア(モジュール・端末)+ ネットワークサービス」の組み合わせで、パートナー(Grundfos、Agbot、One-Tank、RF Technologies 等)が最終製品に組み込んで提供する。導入前は衛星電話やIridiumのような高価・高消費電力の回線か、そもそも通信手段がなかった現場に対し、導入後は電池交換不要で年単位の無人モニタリングを月1ドル未満から実現する点が最大の変化である(出典: SatNews 2026年7月1日)。

ビジネスモデル

料金を支払うのは産業ユーザーおよびソリューションを組み込むパートナー企業。収益は「端末ハードウェアの販売」と「デバイス単位の接続サブスクリプション」の二層構造で、後者が継続収益(リカーリング)を生む。2026年7月に発表したハイブリッド(衛星+地上セルラー)プランはデバイス1台あたり月0.99米ドル(2026年)からで、圏内では安価な地上網、遠隔の「ゼロセル」域でのみ衛星に自動切替してコスト曲線を平準化する設計(出典: SatNews / IoT Business News 2026年7月1日)。

構造的には、接続サブスクリプションが積み上がるほど粗利率が改善しやすいSaaS的モデルである一方、自社は衛星を保有せず Spire Global にホスト型ペイロードを搭載する方式のため、大規模な衛星製造・打ち上げの固定費を回避できる(後述)。ただしアデレードのハードウェア製造能力への投資は継続しており、端末製造には設備・在庫負担が伴う。デバイス単価が月1ドル前後と低いため、収益拡大は「接続デバイス数の絶対量」に強く依存する。顧客獲得から売上計上まではハード導入を挟むため一定のリードタイムがある(推測)。

市場と競争力

対象市場は衛星IoT接続。Myriota は Gartner 予測を引用しIoT市場が2028年に9,910億ドル規模へ拡大するとするが、これは衛星IoTに限らないIoT全体の数字である点に注意(出典: Myriota 2024年12月)。衛星IoT接続そのものの市場は数億〜十数億ドル規模で急成長中とされる(推測)。

主要競合は Astrocast(スイス)、Sateliot(スペイン、NB-IoT NTN)、Kineis(仏)、そして高価格帯の Iridium。かつての有力競合 Swarm Technologies は SpaceX に買収されサービスが縮小した。Myriota の差別化は「超低消費電力の直接衛星接続(10年電池駆動)」という省電力・低コストの極致にあり、標準的なNB-IoT端末をそのまま使う Sateliot 型とは設計思想が異なる。技術的優位は南オーストラリア大学由来の信号処理と、衛星在圏時のみ送信するスマート電力制御にある。

参入障壁としては、(1)特許・独自プロトコル、(2)Spire との複数世代にわたるペイロード提携、(3)一度設置された端末の高い切替コスト(10年据置運用が前提)、(4)豪州政府・防衛の採用実績と国内製造という調達上の信頼性が挙げられる。5G NTN(HyperPulse)への移行は、独自規格から3GPP標準準拠へ舵を切ることでエコシステム拡大を狙う動きだが、同時に標準化で競合と土俵が近づくリスクも伴う。

実績と成長性

Spire Global との提携により、Myriota のペイロードを搭載した衛星は40機超に達した(2025年、Transporter-12 で追加打上げ)。カバー範囲は米国・メキシコ・アルゼンチン・ブラジル・豪州・ニュージーランド・サウジアラビアに拡大(出典: Computer Weekly 2025年、SatNews 2026年7月)。

導入事例として、豪州 Kalala Station が約100万エーカーに散在する67の給水ボアを Myriota 接続で遠隔監視、Grundfos Solar Connect は家畜農家の給水ポンプ・タンク監視で数百時間の労力削減を実現したとされる(出典: Myriota公式サイト)。パートナー・顧客には Boeing、Grundfos、Agbot、One-Tank、RF Technologies、SingTel Innov8、豪州国防省が名を連ねる。製品は実際に軌道上で商用運用されており、2025年12月の HyperPulse 商用化、2026年7月のハイブリッド化とサービス拡張が続く。

財務(売上・粗利・損益)は非公開。代替指標としては、拠点の国際展開(7カ国超+メキシコ)、衛星数40機超、最大100人の雇用計画、直接衛星接続の「トップ5プロバイダー」を自称する点が成長を示す(出典: Myriota 2024年12月)。ただし接続デバイスの累計数や具体的な売上規模は確認できず、商用スケールの実態は判断材料が不足している。

資本政策と投資評価

累計調達額は、Tracxn 等の集計で約8,030万豪ドル(6ラウンド、32投資家)、ただし同社は「VC+政府投資で1億豪ドル超」を調達済みとする(出典: Tracxn、Myriota 2024年12月)。直近ラウンドは2024年12月の5,000万豪ドルで、うち2,500万豪ドルを国家再建基金公社(NRFC)が拠出——NRFCにとって宇宙産業への初投資。残りは Main Sequence、Inter Valley Ventures 等(出典: Myriota「$50M Funding」2024年12月、NRF公社)。

過去の主な投資家には Boeing HorizonX、In-Q-Tel(米CIA系)、Singtel Innov8、Hostplus、Right Click Capital、Stellar Ventures、Firemark Ventures、元豪首相 Malcolm Turnbull など。2020年のシリーズBは1,930万米ドル/2,800万豪ドル規模だった。推定バリュエーションは非公開(各データベースで非開示)。

出口は、M&A(通信・IoT大手や防衛系による買収)が現実的シナリオ。IPOには売上規模の開示不足から現時点で距離があるとみられる(推測)。2024年調達が製造能力拡張とグローバル展開に充当されていること、雇用100人計画を踏まえると、商用スケール到達までに追加調達が必要になる可能性がある(推測)。

総合評価

Myriota を一言で表せば「セルラー圏外の産業センサーを、単三電池2本で10年、月1ドル未満でつなぐ衛星IoT企業」である。顧客が選ぶ最大の理由は圧倒的な低消費電力・低コストと設置後の無保守性で、これは衛星を自社保有せず Spire にホストする軽資産モデルと、独自の省電力プロトコルによって支えられている。最強の競争優位は「10年電池駆動」を成立させる電力・コスト設計と、豪州政府・防衛および Boeing・Grundfos 等の採用実績。

最大の事業リスクは、(1)5G NTN標準化で Sateliot 等と競争が正面衝突する可能性、(2)デバイス単価が月1ドル前後と極めて低く、収益拡大が接続数の大量獲得に依存する点、(3)売上・利益率が非開示で商用スケールの実態が見えない点。今後3〜5年の成長ドライバーは HyperPulse(5G NTN)とハイブリッド地上連携による適用領域拡大、および中南米・中東の新市場。競合比では技術ニッチのリーダーだが規模は中堅で、投資対象としては「豪州発の堅実なディープテックだが、財務不透明ゆえ確信度は中程度」。情報不足で判断できないのは、接続デバイス数・売上・バリュエーション・粗利構造である。

重要事項サマリー

項目内容情報源・時点
設立/本社2015年、豪州アデレード(南オーストラリア大学発)space.gov.au 2025年
創業者/CEOAlex Grant・David Haley 創業、CEO は Ben CadeMyriota 2022年
事業超低消費電力の直接衛星IoT接続+5G NTNMyriota 2026年
主力製品UltraLite、HyperPulse(5G NTN)、AssetHawkMyriota公式 2026年
衛星Spire Global にホスト、40機超Via Satellite 2025年4月
価格ハイブリッド接続 月0.99米ドル/台〜SatNews 2026年7月
主要顧客Boeing、Grundfos、豪州国防省、Agbot 等Myriota公式
累計調達約8,030万豪ドル(社称は1億豪ドル超)Tracxn / Myriota 2024年
直近ラウンド2024年12月 5,000万豪ドル(NRFC 2,500万)Myriota 2024年12月
主要投資家NRFC、Main Sequence、Boeing、In-Q-Tel、Singtel各社発表
カバー範囲米・墨・亜・伯・豪・NZ・サウジSatNews 2026年7月
従業員約45〜73名(推計)、100人雇用計画Tracxn / Myriota 2024年
財務(売上等)非公開確認できず

情報源